2009年7〜12月



■2009.10.9
 ご愛読に感謝!

思わぬところで、本サイトの愛読者?に遭遇しました。

お一人目は、先日の「記者クラブ」オフ会に
初めて参加してくださった
Sさん
現在、某カトリック雑誌の編集者として活躍中。
地方紙で記者をした後、この業界に転職したという
経歴が自分と重なり、親近感を覚えました。

一般紙と業界誌の違いや、
転職して良かったこと、現職場での葛藤などについて、
率直な意見を出していただき、当日は
他のキリスト教メディア
3紙の記者も参加していたので
非常に盛り上がりました。

終了後、そのSさんから「HP見てます!」との
告白を受けびっくり!(xox;)
記者クラブの呼びかけ人である同僚の
Tさんから
紹介されたのだとか…。
「記者クラブ」のブログならいざ知らず、
もろプライベートな本サイトも見ていただけたとのことで、
恐縮しまくりでした…(汗)。

お二人目は、季刊「Ministry」の執筆者として
ご協力いただいているドイツ在住の
Yさん
Yさんとはまだ知り合って間もないのですが、
帰国されるたびに機会を見つけてお会いしています。

同世代で趣味もかぶっているため、
教会の話だけにとどまらず、
漫画の話から
アイドル談義にいたるまで、実に多岐にわたる
雑談をさせていただきました。
雑誌の編集スタッフは年上の方が多いので、
同年代の意見は非常に貴重です。
やはり若い
書き手の発掘も課題ですね。

宮崎駿、庵野秀明、酒井美紀、大江健三郎の
インタビューは何とか実現させたいものです。
細田守監督の「サマーウォーズ」も面白そうですね!

時折、本サイトもチェックしていただいているとのこと、
感謝します。がんばります。
「いったい、いつ更新する時間があるの?」
と感心されてしまいましたが…
深夜です。寝かしつけてからが勝負!

ともあれ、一部マニアの皆様、
引き続きお付き合いくださいませ。



■2009.10.2
 不条理な死を前に

またも組織によって「真理」が犠牲となった。
企業のうたう「
安全」はもはや神話でさえない。
JR福知山線の脱線事故で
報告書の漏えいが明らかとなり、
事故調査の中立性が改めて問われている。

9年前の営団地下鉄(現・東京メトロ)
日比谷線脱線事故が脳裏をよぎる。
死亡した5人のうちの1人は、
若くして長老に選ばれた同じ教派の
敬愛する兄弟だった。

突然の別れに、教会の葬儀へ
駆けつけた多くの友人・知人らも
悲嘆と動揺を隠せなかった。

当時の
営団総裁は同じキリスト者として、
教会発行の追悼文集に寄稿し、
故人や遺族の信仰をたたえた。

「このたびの
不幸な列車事故は、このように優れた
若き信徒の命を奪ってしまいました。
なぜ、神様がこのように早く○○さんを
天に召されたのか、
誰にもわかりません

「○○牧師が語られた『人の生死は
神の
定められるところ
であって、つらい事態ではあるが、
そのように受け止めなければならない』という
キリスト者の死生観に関するメッセージ、そして
○○さんのご両親が語られる同趣旨のお言葉は、
これを聞いた営団役職員の口を通して、
尊敬の念をこめて語り広められています」
(追悼文集「一粒の麦」より)

他方、事故後の営団側の対応に
不満と憤りを覚えたある遺族は、
慰霊碑への記銘すら拒否し続けている。

同じ事故で17歳の息子を失った父によるHP
17才の生涯」は、涙なしに読むことができない。
やはり、誠意のない組織への
怒り
愛息を突然奪われた遺族の
慟哭がつづられている。

わたしたちキリスト者は、彼らに届く言葉を持っているだろうか。
この世のどんな悲劇も
神のご計画」であることに変わりはないが、
人命軽視、利潤・効率最優先の市場主義社会のもと、
政官財の癒着、天下りの構図や
大企業の無責任体質を不問に付すことが、
果たして信仰者に求められる姿勢なのだろうか。

「空の安全」を求め、信念を貫く主人公の戦いを描いた
映画「
沈まぬ太陽」(山崎豊子原作)が、今月公開される。
不条理な死、人間の「罪」から生まれる構造的な巨悪を前に、
わたしたちはどこに立つべきか。



■2009.8.31
 ことばのチカラ

キリスト教出版関係者の研修で、
松岡享子さんの話をうかがう機会に恵まれた。
松岡さんといえば、東京子ども図書館の創設者で、
特にその
語り読み聞かせについては、
教員時代にA先生からことあるごとに勧められ、
また学校にお呼びする機会もあったのだが
直接話を聞くのは今回が初めて。

子を持つ親にとって、また本に携わる仕事をしている者にとって
実に示唆に富む話をしてくださった。

長年、子どもの本に関わる中で、
どんな本が
良い本かよりも、むしろ良い読者
育てるためにどうすればいいかを考えるようになったという。

「読書の質を決めるのは、本のよしあしと同じくらい重要な、
読み手のもつ
ことばをイメージにかえる力
「本と読者が出合ったときに何かが起こるのが
意味のある読書。そのためには、
本自身にもポテンシャルな力が必要だが、
同時に読者にも
本から何かを感じ取るだけの力
がなければならない」

松岡さんによれば、70〜80年代の高度経済成長期に
子どもの様子が劇変したのだとか。
読み聞かせをしていても、今まででは考えられない
反応を示すようになった。
「むしろ今のほうが回復してきている」と聞いて少し安心。
やはり子どもの成長にとって、あまりに急激な
経済発展はいい影響を与えないらしい。

「現代の子どもたちは、実感を伴わない
情報としての言葉が氾濫しすぎていて、
言葉に対して
薄っぺらなイメージしか持っていない」
という話にはうなずかされた。やはりテレビの影響は甚大だ。

「でも、この流れは止めようがありません。だから、
少しでも身の回りにある
本物に目を向けさせ、
言葉を
体感できるように助けるのが大人の役目」
というアドバイスにも同感。決して悲観的でないところがいい。

子ども向けの本が年間4000冊発行される中で、
子ども図書館のスタッフが選ぶ
推薦できる本
わずか200〜300冊(
5〜7.5%)だけ。
それも名作の復刊本が多いという。
良書を探すのもひと苦労。

でも、希望を捨てることなく、
言葉の力子どもの力を信じて、
子育てに励もうと思わされたひと時だった。


 松岡享子さん



■2009.8.17
 巨匠 安彦良和氏を訪ねて

またまた「週刊金曜日」(2009年8月21日)763号
中山千夏の名文から。


「今の日本漫画やアニメのブームは、
完全にアンポンタン国の仕掛けだよ。
……『漫画オタク』を自認する麻生総理が、
自分の趣味だか思いつきだかを国家権力で押し通し、
そのまわりに業者やら芸能者やらがわっと群がり、
世界へ進軍する図柄がまざまざと浮かび上がるではないか」
「国家権力に後押しされてメインになっちゃったら、
それはもう
サブでもポップでもないじゃん。
そんなとこに群がるなよ。周縁でまったりオタクやろうよ」

おそらく、いわくつきのハコモノ「
マンガの殿堂」も
念頭に置いたなかなか鋭いご指摘。

先日、念願かなって夢のインタビューを実現できた
かの
安彦良和氏もまったく同じことを言っていた。
「当時、ガンダム(を含めたアニメなどのサブカル)
なんて
ゴミでしたよ」

自らがキャラクターデザインを手がけ、
今なお『ガンダムORIGIN』を執筆中の氏自身が断言する。
そう。あくまで
サブであることにこそ
価値があるのであって、それに国家やら役人やら
が介入して
メインになった途端、その魅力は
損なわれてしまうのかもしれない。

ともあれ、一部マニアからは神のようにあがめられ、
数々の名作を世に残した
巨匠とは微塵も感じさせない
腰の低さと謙虚さには、つくづく感心させられた。
「僕は絵が下手だから、上手いヤツ見ると
嫉妬しちゃうんだよねぇ」と苦笑いしながら、
実に丁寧に、一つひとつ質問に答えてくださった。感謝!

ちなみに僕と安彦ワールドとの出会いは、
大の安彦ファンだった中学時代の友人
A君の描く絵。
A君も羨ましいほど絵が上手かった。
そして、マイナーではあるが、『異次元騎士カズマ』
シリーズ(王領寺静=藤本ひとみ著)の挿絵。
その肉感的なタッチは、中学生だった僕には
かなり
刺激的だった…(恥)。

  

▲インタビューでは、97年の作品『イエス』についても
 存分に語っていただいた。来年1月発行の「Ministry」
 
第4号の「ハタから見たキリスト教」をお楽しみに。



■2009.8.15
 持つべきものは「同期」

大学から、テレビ、教員、現職に至るまで
一貫して
同期には本当に恵まれてきた。

その時々でさまざまな出会いが与えられたが、
何よりも同じ苦労を共にした同期には、
後々まで恩を感じることがある。

昨日は、大学時代、共にケーブルテレビ局の立ち上げに
携わった同期で現在はY新聞社のカメラマン
と、
同じく後輩で現在はA新聞社の技術マン
の3人で
集まった。

Tとは卒業以来、実に
10年ぶりの再会。
だが、お互い当時の面影を十二分に残しつつ、
かついろんな経験を経てきた者同士、しかも
現在似たような職種にあることもあり、大いに盛り上がった。

在学中は彼の作る映像のカッコよさに触発され、
「負けられない」と勝手に
ライバル心を燃やしていた。
そうした意味でも、やはり同期から与えられる刺激は
貴重なもの。

大手新聞社に勤める2人からの話に興味は尽きない。
それぞれの採用のされ方とか、新人研修の中身などなど。
Tの属する写真部は、社内から「
動物園
と呼ばれるほど
濃い個性の集まりだとか。
やはり、報道の第一線で働くには
フツーでは
やっていけないのだ。

入社2年ぐらいは使いものにならないという前提で、
中にはカメラを持ったこともないという人まで
採用されるという。しかし、研修期間を経て
実践を通して学んでいく中で、入社時の
はほとんど
なくなってしまう。だから、意外にも専門学校などでしっかり
写真を学んだという人はごくわずかなのだそう。
Tいわく「結局、そういうのは
センスの問題なんだよねぇ」
同感である。

そして、「大手の平(社員)より、やりたいことがやれる
』の方が絶対にイイ!」と羨ましがられてしまった。
確かに給料は比にならないが、
テレビ局にいた頃とは格段に
自由度が違う。
仕事って結局、お金だけではできないものなのだ。

いろんなことを共有できた貴重な時間。
持つべきものは、いつまで経っても頼れる同期だ。



■2009.8.12
 「抑止力」万歳?

時事通信のニュースから。
――――――――――――――――――――――――
 米キニピアック大学(コネティカット州)の世論調査研究所が行った調査で、64年前の広島と長崎への原爆投下について、
米国人の61%が「投下は正しかった」と考えていることが4日、分かった。投下を支持しない人は22%にとどまった。
 オバマ大統領は「核なき世界」の実現を訴えているが、米国では依然、
原爆投下を肯定する意見が根強いことが浮き彫りになった。
 調査は7月27日から今月3日にかけて、全米で約2400人を対象に実施された。男性の72%が投下を支持したのに対し、女性は51%。年齢層別では、18〜34歳は半数が「正しかった」と回答し、「間違っていた」は32%だったものの、55歳以上では投下支持が73%に上った。
 政党支持者別では、共和党支持者の74%が投下を評価、民主党支持者では49%だった。
――――――――――――――――――――――――

国内でも、田母神をはじめとする「歴史修正主義」の
台頭には目に余るものがあるが、64年たった米国ですら
この認識という現実に暗澹たる思いがする。

他方、このたび来日した国連のデスコト総会議長は、
広島、長崎を訪問し、「エノラ・ゲイ」の機長が
同じカトリック信者だったことにもふれ、
「軍の命令とはいえ、
キリストの教えに反するもの
キリスト教社会を代表して、許しを請いたい」と語ったという。
この違いは何か。

「仕方がなかった」「
神の裁き
「戦争を終わらせて、被害の拡大を抑えた」などなど、
必要悪として「受忍」する声は被爆地にもある。

しかし、その論理は9・11以後のアフガン空爆や
イラク戦争をも結果的に肯定するアメリカ流の口実にすぎない。
最小限の犠牲」などというレトリックに騙されてはならない。
植民地支配を受けたアジアの国々が、日本の動向に
目を見張り、侵略戦争を美化する動きにNOと声を
上げるように、日本もアメリカの横暴勝手な振る舞いには、
しっかりとNOを突きつけるべきではないか。

そして、その根底にある
暴力への依存体質をこそ問いたい。

「北朝鮮にやられたらどうする」と言って
の傘にすがるのも、
「撃たれたらどうする」と言って規制に踏み切れないのも、
「犯罪が増えたらどうする」と言って死刑が廃止できないのも、
「生徒にナメられたらどうする」と言って
体罰を容認するのも、
結局は根が一緒のような気がする。
いわば暴力信仰、腕力主義、「抑止力」至上主義。
力なき正義は無力――果たしてそうか??

真の「平和」とは?
真の「非暴力」とは?

64年目の夏に、また考えてみようと思う。



■2009.8.3
 一億玉砕!?

愛読する「週刊金曜日」(2009年7月10日)758号
に掲載された大藤理子氏の政治批評は秀逸だった。

取り上げたのは、国立競技場に建立された
裕次郎寺」に約12万人が訪れたというニュース。
22年前の葬儀参列者は3万人余だったのに…。

「テレビに映し出される行列を見ながら、
この中に、2005年の衆院選で
小泉自民党
一票を投じた人はどれぐらいいるだろうかと考えてみる。
独断と偏見では、かなり、相当、いると思う。うん。」
「裕次郎がスターだったことは認めるとしても、
死後のこの『
神話化』は実に気色が悪い」

話が飛ぶようで恐縮だが、先日キリスト新聞で
私が連載を担当させていただいた武田清子氏の
「出逢い」が単行本化された(さりげなく宣伝!)。

(四六判/250頁/定価2,100円)

本書の中で、かつて著者と対談したインドのネルー首相
日本人の国民性について
良い方向にも悪い方向にも規律正しく猛進する傾向がある
と指摘したという逸話が紹介されている。

先頃のインフルエンザ騒動も然り。関西から来た
外国人の記者が、マスクをしないとまるで「
非国民
であるかのような視線を浴びて恐怖を感じた、と
憤慨されていた。安全なはずなのに
患者を隔離するのは明らかな「人権侵害」だ!とも…。

此度の選挙戦でも、「
セーケンコータイ」の大合唱の中、
あたかも首相が変われば世の中ハッピーになる
かのような「雰囲気」が醸成され、庶民の暮らしを
「破壊」してきたはずの党までもが一緒に
国民の生活を守る」と豪語するという茶番。

大藤氏も指摘するように、おそらく「郵政選挙」で
小泉氏を支持した人々が、今度は同じ
ノリで、
うわべだけの
ハリボテをまつり上げるのではないか。
セーケンコータイの意義は一定認めつつも、
何だか心中穏やかではない。



■2009.7.22
 最近のヒット本 〜コミック編〜

最近読んだマンガから。
いずれも映像化された原作ものです。



▲手塚治虫
『MW』
(洋泉社新書・2008/1)


漫画の神様・手塚治虫による「衝撃の問題作」を
謳ったサスペンス。人物設定もテーマも描写も、
とにかく陰鬱としていて逆に新鮮です。
映画は、ユダ級にガッカリするのでオススメできません。



▲伊藤実
『アイシテル〜海容』
(講談社・2007/3)


TVドラマを見て夫婦でハマりました。
原作の方がより説得力のある設定で、読ませます。
子を持つ親は必見でしょう。我が身に置き換えて、
いろいろ考えてしまいました。




▲細川貂々
『ツレがうつになりまして。』
(幻冬舎・2009/4)

数ある「うつ本」の中でも、リアルで分かりやすく、
かつ暗くないのが特長。誰もが「うつ予備軍」であることを
認識させられます。「自分は大丈夫と思っている」
「頼まれたら断れない」…思い当たる節が多々。

 

inserted by FC2 system